NVC

NVC私的まとめ

ポイントその1

一切の診断や評価を交えずに、行動を定義する

その2

自分の感情を表現するときは、その感情の原因が自分のニーズにあることを明確にするような言葉を添えることが、きわめて重要なのです。

その3

人々がお互いを診断し合う状況を乗り越えて、ニーズのレベルで互いの内面につながるような支援ができたとき、いつも驚くべき変化が起こるのです。それが始まれば、対立はほとんど自ずから解決するかのように動き出すのです。

その4

「自分の望むことを相手がするなら、その理由はどのようなものであってほしいのか」

その5

明確なリクエストを提示したあとには、それが強要と受け取られないように気を配る必要があります。すでに述べたとおり、「批判」という、相手の誤りをほのめかすようなやりとりは、こちら側のニーズを満たさないコミュニケーションになってしまうでしょう。そして「強要」は、人間関係に破壊的な結果をもたらすもう1つのコミュニケーションなのです。

その6

求められる結果が重要なほど、強要しないことが大切です。
相手に「これはお願いなんだ」と信用してもらうためには、まずは相手が「そのリクエストに対して異議を唱えたとしても理解してもらえる」と確信する必要があるのです。

その7

自分の行動からできるかぎりの学びを得る方法が、2つあります。1つ目は、自分の行動によって満たされなかったニーズに気づくこと。2つ目は、その行動によって満たそうとしていたニーズに意識的であること。この2つのニーズに気づきの意識を集中していられたら、自尊心を失わずに自分の至らなさから学べるようになるでしょう」

その8

自分に共感する力が、他者への共感の土台になる。自分の至らなさから学ぶには、罪悪感や自己否定ではなく、共感が必要。自分を「おかしい」と思い続ける限り、他人にも同じような判断を向けてしまう。

その9

自己共感ができれば、 「満たされなかったニーズ」「満たそうとしていたニーズ」の両方が見えてくる。ニーズに意識を向けることで、自尊心を保ちながら成長できる。他人を評価・非難する癖からも自由になれる。

その10

通常の「謝罪」は、自己否定という暴力的なゲームに過ぎない:多くの謝罪には、「自分は責められて当然」「自分はひどい人間だ」という自己嫌悪の構造が含まれている。「十分に自分を責めたら許される」という形の謝罪は、真の癒しにはつながらない。

その11

真の癒しは、「ニーズ」につながったときに起こる。自分の行動によって満たされなかったニーズに気づくとき、初めて学びと癒やしの苦しみが生まれる。それは、罪悪感や自己憎悪ではなく、本質的な痛み(自然な苦しみ)であり、自己共感と成長の源となる。

その12

共感とは、「理解」ではなく「つながり」である。相手の中にある美しさ・生命力・神聖なエネルギーを感じ取ること。“ともにいること”。つまり、「今ここ」に完全に存在することである。相手を「分析」しているときは共感できない。知的理解ではなく、現在の感情やニーズに寄り添う心の姿勢が大切。

その13

他人の評価や判断には耳を貸さないこと。相手の言葉の背後にある「感情」と「ニーズ」に意識を向けること。共感とは、相手の中に流れるエネルギーとともにいる体験。それは神聖で崇高なつながりである。この共感的つながりがあれば、どんな対立でも全員のニーズが満たされる解決が可能になる。

その14

文化や価値観の違いがある相手にも、NVCによって共感し、平和的に関係を築くことができる。敵対的な対応よりも、共感に基づいた外交的姿勢の方が効果的である。

その15

わたしはこういう癒やしのワークをする際に、自分が演じる人物の内面で何が起きているかを、頭で考えようとはしません。代わりに、自分をその立場に置き、もし自分がそのようなことをしたなら、そのときに内面で息づいていたと思われるものを言葉にするのです。この女性がそれに耳を傾けることができたとき、あれほど苦しんだ経験に対してようやく、驚くほどの癒やしが起こったのです。

その16

すべての言葉や行動の奥には、「美しいニーズ」という歌が流れている。たとえそれが怒りや沈黙、拒絶のかたちを取っていても、その背後には「わかってほしい」「大切にされたい」「安心したい」といった純粋で神聖な願いがある。共感とは、その“内なる歌”を聴き取ること。相手の言葉に反応せず、心の奥底に流れている「美しさ」に耳を澄ませるとき、私たちは本当にその人とつながることができる。

その17

共感とは、相手の意見に同意したり、好きになったりすることではない。今この瞬間、相手の中で何が起きているのかに“誠実に関心を寄せること”。存在そのものを差し出すことが最大の贈り物になる。相手と真に「つながる」には、評価や判断を保留し、ただ一緒に「そこにいる」覚悟が必要。

その18

わたしたちが、自分であれ、他者であれ、社会的にであれ、何らかの変化をもたらすために真の意味で力を持つためには、『どうすれば世界は今よりよくなるか』という意識から出発する必要があるんです。相手には、今より少ない代償で自分のニーズをよりよい形で満たせる方法がある、ということをわかってほしいのです

その19

1万年前、人類は「善人が悪人を成敗することが善である」という神話を形成し、それが支配的社会(支配者が他者をコントロールする社会)を正当化する思想基盤となった。この社会では、人々に「自分のニーズを持たないことが美徳」という考え方が植えつけられ、女性は家族のために自己犠牲を強いられ、男性は国家のために命を差し出すようになる。そして報酬と懲罰を正当化する「報復的正義」が司法制度に組み込まれていった

その20

「報酬や懲罰に値する」という考え方に基づいた“報復的正義”の思想が、現代における暴力の根源となっている。専制的な体制を維持するためには、人々に「善悪」や「正誤」といった絶対的価値観を信じ込ませ、それを判断する権限はヒエラルキーの上位者にあると教え込めばよい。こうして人々は、自分より上にいる者からの評価を気にするようにプログラムされていく。

その21

支配的な体制は、人々が自己や他者の内面とのつながりを断ち、代わりに外部からの評価ばかりを気にするように仕向ける。その結果、人類は思いやりよりも評価と判断を重視する言語や思考法を発展させ、共感的なつながりが失われていった。

その22

他者からの評価を重視する文化は、人間同士の思いやりと内面のつながりを弱めてしまう。

その23

ギャングとは人々が嫌がる行動をとる集団とすれば、最も恐ろしいのは、「多国籍企業」や「政府」という名のギャングであり、彼らは学校教育を通じて、報酬のために働く従順な労働者を育てようとしている。彼らの目的は、生徒たちを将来、意味のない作業を長期間続ける労働者に仕立て上げることにある。

その24

この批判は、従来の教育や社会システムが個人の自由や本質的な価値観を抑圧し、支配に従わせる構造になっているという問題提起でもあります。

その25

学校制度は、経済構造という「ギャング」の意図に沿って設計されており、次の3つの目的を持っている:
1. 権威への服従を教えること
2. 報酬(給料など)のために努力する人間を育てること
3. カースト制度を維持しつつ、それを民主主義のように見せかけること

この構造は、個々の教師や学校が悪いのではなく、全体の経済システムが人を従順で疑問を持たない労働者に育てようとする仕組みになっていることが問題の本質だと指摘している。

本当に子どもの幸福を願うなら、単なる学校改革では不十分で、教育を取り巻く社会全体の構造そのものを見直す必要があると強調している。

その26

今や誰もが、この国の司法制度の一部である懲罰的な構造の失敗について気づいていることを願っています。必要なのは、報復的司法から修復的司法へのシフトなのです。

その27

NVCのトレーニングの目的は、参加者が「内面の変化」だけでなく、「外の世界も自分たちの力で変えられる」という実感を持ち帰ることにあります。

そのための第一歩は、「敵のイメージ(エネミー・イメージ)」から自分を解放することです。
これは、「相手は間違っている」「異常だ」という思い込みを手放し、相手もまたニーズに動かされている存在だと認識することを意味します。

現実には、人々は自分のニーズを明確に語ることは苦手なのに、相手を批判する(=診断する)ことには長けている。その結果、対立は激化しやすくなります。

しかし、相手を悪と決めつける思考から抜け出せたとき、初めて共通のニーズに気づき、解決に向かう道が見えてくる。
これは、どれほど深刻な対立や敵対関係においても適用できる、人間的なつながりの回復方法だとされています。

その28

NVCは、「暴力の抑制」ではなく「暴力が必要なくなる世界」を目指す方法論。
テロリストや加害者とされる人々さえも「人間としてのニーズを持つ存在」と見なすことが、真の平和への出発点になる。

その29

🔷 テロリズムとNVC

◆ 相手を「テロリスト」と見なすことの問題
• 相手を「テロリスト」と決めつけ、自分を「正義の味方」と見なす限り、対立は解消されず、暴力の連鎖が続く。
• 相手が行った暴力の根底には、「満たされないニーズ」があるという視点を持つ必要がある。

◆ 共感の出発点
• 過去にテロ行為に至った人々も、初めは穏やかな方法で苦しみを訴えていた。
• その声が無視・抑圧された結果、過激な手段に至ったという歴史的背景がある。
• 「敵のイメージ」から抜け出し、相手のニーズに共感することが第一歩。

🔷 行動の前にすべきこと
• 相手の行動が自分に与えた痛みを見つめ、自分の満たされないニーズを言語化する。
• 共感を通じて、双方のニーズを平和的に満たす方法を探る。

🔷 「絶望のワーク」
• トレーニングではまず、自分の内面にある「敵イメージ」や痛みと向き合い、どんなニーズが満たされていないのか明らかにする。
• 敵対的な感情を持ちながらは、真の共感も変革も起こらない。

🔷 構造的変革のアプローチ
• 相手が政府や多国籍企業といった「巨大ギャング」であっても、破壊ではなく「内部の人との共感的なつながり」を通じた変革が目指される。
• 相手のニーズを一緒に明らかにし、代償が少なく効果的な方法でニーズを満たす手段を一緒に模索する。

🔷 変化を起こす力の源
• 構造的な変化には、「数の力」と「共感の連鎖」が必要。
• 多くの人が「今のやり方より良い方法がある」と気づいたとき、社会は動く。

🔷 ルーミーの言葉とNVCの本質

「まちがった行い、ただしい行いという思考を超えたところに、野原が広がっています。そこで会いましょう」• 善悪の二元論を超えて、ニーズとつながることで見える世界がある。 • 怒りや暴力の裏側にあるニーズに触れると、人は「対立ではない道」を選べるようになる。

✅ 結論

NVCは、「暴力の抑制」ではなく「暴力が必要なくなる世界」を目指す方法論。
テロリストや加害者とされる人々さえも「人間としてのニーズを持つ存在」と見なすことが、真の平和への出発点になる。

その30

社会の変化を促すときに重要なのは、同じようなビジョンを持つ人たちとつながることです。変化に取り組むチームの初期に起こりやすいのが、メンバー同士の対立です。わたしたちは、とかく、チームワークに適さないスキルを身につけてしまっています。

その31

相手が個人であれ集団であれ、わたしたちが何かを伝える際には、相手に求めている反応を明確にしておくことが重要です。明確なリクエストをせずに自分の苦痛や考えを表現すると、非生産的な話し合いにつながりやすい

その32

人は役所のような「構造」に属する相手を、人間として見ることを忘れがちであり、相手も構造的な言葉(お役所言葉)で応じがちです。NVCを用いれば、どんな構造の中でも相手を一人の人間として見て、背後にあるニーズに耳を傾けることができるようになります。社会変化を実現するには、構造の内部にいる人を敵とせず、双方のニーズを尊重しながら根気強く対話を続け、協働できる関係性を築くことが重要です。

その33

社会を変えるプロジェクトへの支援を求めるときには、最初に、こちらが取り組もうとしている変化を支援したいかどうかを判断するうえで、わたしから何を聞く必要があるかを相手が見いだせるように、状況を整えます。

その34

たとえ時間が限られていても、自分から一方的に話すのではなく、相手に必要なことを質問してもらう方が、結果的に有益な対話になる。
今回は5分で意思決定を求める場面で、事前に「何を聞けばいいか」と尋ねたところ、相手からの質問が40分も続き、深い理解と有意義なやりとりが得られた。

その35

社会を変えようとする人ほど、自分の内面と向き合う必要がある。
対立する相手に対して強い怒りや偏見を抱えていると、相手を「人間」として見ることが難しくなる。そのような感情や思い込みに気づき、自分自身の内面を見つめ直すことは、対話や協働の前提となる。「絶望のワーク」のように、内面的な痛みや固定観念に向き合うプロセスを通じて、精神的な土台を整えることができれば、より力強く持続可能な社会変革につながっていく。

その36

思いやりは宗教の仕事ではなく、人間の仕事である。贅沢品ではなく、わたしたち自身の平和と精神の安定を支える必需品なのだ。思いやりは人の存続のために絶対にかせない。

その37

社会を変えようとする活動において最も重要なのは、まず自分自身の内面と向き合うことである。私たちは対立する相手に対して怒りや偏見を抱きがちだが、その感情に気づかずに行動すれば、対話や協働はうまくいかない。変化を望むなら、まず自分の「絶望」や「痛み」と誠実に向き合い、相手を“敵”としてではなく、ひとりの人間として見る努力が必要となる。

その38

共感をもって相手の背景やニーズに耳を傾けることで、たとえ対立的な立場であっても、信頼や変化の可能性が生まれる。このとき大切なのは、「相手を打ち負かすこと」ではなく、「自分が目指す世界の美しさに基づいて関係を築こうとする姿勢」である。誤解や裏切りのリスクがあったとしても、対話によって築かれるつながりには、社会を前進させる力がある。

その39

組織や職場での対立の多くは、「立場」や「意見」の衝突ではなく、認められたい・尊重されたいという
感情やニーズが満たされていないことから生じている。

しかし、職場では感情を語ることがタブー視されやすく、それが対話の不全や関係の悪化を招いてしまう。
真に生産的な話し合いを成立させるには、論理的議論だけでなく、互いの「感情」と「根底にあるニーズ」に耳を傾け、
それを尊重し合うプロセスが不可欠である。

その40

多くの企業では、社員が感情やニーズのレベルで話し合うことは困難であり、人間らしさが軽視されがちである。
組織の文化が「生産第一」で固定されていると、感情や人間性は無視されやすくなる。
しかし実際には、社員が自分の感情とニーズを理解されていると感じられるときにこそ、生産性も向上する。

その41

評価を交えずに観察する能力は、人間の知性として最高のあり方

その42

批判を交えずに行動を評価するには、「診断」ではなく「具体的な観察」に基づく表現が必要である。

その43

社会変革の最大の課題は、対立する当事者同士を同じ場に集めることにある。
スイスのリゾートホテルでの事例では、対立するマネージャー同士が顔を合わせるのを拒んでいたため、筆者が双方と個別に会い、NVC(非暴力コミュニケーション)を用いて共感的に相手の立場をロールプレイし、その様子を録音して相手側に届けた。
この“共感の橋渡し”によって、直接対面せずとも対立は自然に解消された。
創造的な仲介が、対話の不可能を可能にする鍵となる。

その44

感謝は、社会を変えるエネルギーの源であり、人の内にある神聖な力を呼び覚ます。
怒りや正義感ではなく、「命に貢献する喜び」から力を発することこそ、深い変革を支える。

その45

称賛や褒め言葉であっても、評価を通じて人を操作することは、真のつながりや自発性を損なう「見えにくい暴力」になり得る。

その46

NVC(非暴力コミュニケーション)では、「称賛」や「褒め言葉」であっても評価的な言葉は避けるべきだとされる。
なぜなら、それらは一見肯定的でも、相手を一定の枠で判断・操作する行為であり、否定的なレッテル貼りと本質的には同じ構造を持つからである。

「優しい人」「よくやった」などの表現は、相手を非人間化し、その本質ではなく評価された行動に縛りつけてしまう。称賛が「ご褒美」として機能すると、相手は操作されていると感じ、生産性や本来の意欲が下がるリスクがある。

これは「報酬」も「懲罰」も、人をコントロールする同じ種類の暴力であるという認識と通じている。
NVCが目指すのは、「相手を支配する力(パワー・オーバー)」ではなく、共に在る力(パワー・ウィズ)であり、それは心の底からのつながりと感謝に根ざしたものである。

その47

日々の生活が幸せだから感謝するのではない。感謝するから幸せになるのだ。そのことにわたしたちは気づかなければならない。

その48

NVC(非暴力コミュニケーション)において感謝とは、「相手の行動によって自分の人生がどれほど豊かになったか」を伝えることであり、ご褒美や称賛ではありません。
その目的は、いのちを祝福し、人と人が本質的につながることにあります。

その49

✅ NVC式・感謝の3ステップ
1. 相手の具体的な行動
 自分の人生を豊かにした、相手の「具体的に何をしたか」を伝える
 (例:「あなたが〇〇と言ってくれたとき」)
2. そのときの自分の感情
 相手の行動によって、自分がどんな気持ちになったかを伝える
 (例:「安心した」「希望を感じた」)
3. 満たされた自分のニーズ
 相手の行動によって、どんな人間的ニーズが満たされたかを伝える
 (例:「息子とつながりたいというニーズが満たされました」)

その50

✅ なぜ「称賛」や「あなたは素晴らしい」では足りないのか?

「あなたは〇〇な人だ」という言葉は、肯定的であってもラベル化=評価にすぎず、
相手が本当に貢献したことの内容が伝わらないため、学びにもつながらず、本質的なつながりも生まれにくい。

その51

✅ 結論:

NVCにおける感謝は、「人を評価する」のではなく、「自分の人生がどう豊かになったかを明確に伝えること」であり、そこに人と人の深い信頼と喜びが宿る。

その52

謙遜する必要はありません。あなたはそれほど偉大ではないのだから

その53

多くの人々が感謝を素直に受け取ることに苦労するのは、
「自分には値しない」「謙虚であるべきだ」といった価値観を幼い頃から教え込まれてきたからである。
こうした教育は、人の内なる力や美しさを否定し、「感謝を受ける資格」や「価値」を問う評価的な思考を根づかせる。

その54

その結果、人は感謝されることに戸惑い、否定したり軽く受け流したりしてしまう。
だが本来、感謝とは「値する・しない」ではなく、誰かが誰かに与えた貢献を認め合う尊い行為であり、魂と魂がつながる瞬間である。

その55

NVCは、こうした評価の枠組みを超えて、
「自分の中の美しさや力」と出会い、それを素直に受け取る勇気を育てようとするものである。

その56

感謝を受け取るとは、自分の内なる光を恐れずに見つめ、その美しさに対して「はい」と応じることである。

その57

本書は、内面・対人関係・社会構造の3つのレベルで「いのちとつながる」実践を通じて、真の平和を生み出す方法を提示してきた。
NVCはまず、自分を責めず学びに変える内面的平和から始まり、他者との共感的な関係、そして企業・司法・政府といった構造の変革にまで及ぶ。

その58

著者は、現行の経済システムと司法制度が人類の苦しみを生んでいることを指摘し、思いやりに基づく新たな構造の必要性を訴える。
特に「修復的司法」や「生命を守る経済」の実現が、人類の進化に不可欠であるとし、それはすでに可能な地点に来ているとも述べる。

59

人間は暴力を超えて、思いやりとつながりに基づいた進化をしていける。
そしてその変化の力は、特別な人ではなく、誰もが持つ「内なる力」によって実現できる。
著者とCNVCの仲間たちは、こうした平和の知恵を広め続けることで、持続可能な未来の礎を築こうとしている。

60

平和な世界の実現には、自己とのつながり、他者との思いやり、そして社会構造の根本的変革が必要であり、その力はすべての人に備わっている。

61

NVCの中心的なエッセンスは、「人生をすばらしいものにする(make life wonderful)」というビジョンにある。
すべての行動が、自分や相手の人生をよりよいものにする意図から出ていてほしい、というのがマーシャルの願いである。

62

そのために重要なのは、2つの問い:

  1. 「今この瞬間、自分たちの内面で何が生き生きとしているのか?」(感情とニーズへの気づき)
  2. 「そのニーズを満たすために、私たちは何ができるか?」(具体的な行動)

63

そしてNVCでは、自分ひとりのニーズではなく、関係するすべての人の人生を尊重し、豊かにすることを目指す。
これは、報復的な「正しい・間違い」ゲームから脱し、全員が活かされる“人生をすばらしくするゲーム”へと移行する生き方である。

64

「〜すべき」という義務感ではなく、自分の感情とニーズに正直に耳を傾けながら選ぶ人生こそ、NVCが指し示すあり方である。
NVCを通して、自分自身と世界を新しい目で見る体験をしてほしい、というのが著者たちの願いである。

65

NVCは「正しさ」で人を裁くのではなく、「思いやりといのちへのまなざし」で、全員の人生を豊かにする選択を可能にする生き方である。

66

NVC(非暴力コミュニケーション)を実生活で使おうとしても、最初は何から始めればよいか戸惑い、実践が難しいと感じることは自然なことである。著者たち自身も、初めはうまくできなかったし、今でも試行錯誤している。

その中で見えてきた有効な実践方法は、相手と対話する前に、自分の中で何が「生きている」かを言葉にしてみること。
すなわち、まずは「自分の感情」と「満たされていないニーズ」を評価や批判抜きに見つめ、それを心の中で言語化し、味わうことが重要である。

例えば、誰かの言葉に傷ついたとき、「何が悪かったのか」と考えるのではなく、「自分は悲しみを感じていたのかもしれない」「思いやりを求めていたのかもしれない」と、自分の内面に目を向ける。
そしてその感情・ニーズをただ観察し、「自分にとってどれだけ大切なことか」に思いを馳せる。

こうすることで、批判や怒りの反応ではなく、「甘い痛み」からくる深い願いに根ざした行動が生まれ、真につながるコミュニケーションが可能になる。

67

NVCを実践する第一歩は、相手に伝える前に、自分の感情とニーズに静かに気づき、それを心の中で言葉にして味わうことである。

68

NVC(非暴力コミュニケーション)を日常に取り入れる際、感情やニーズを言葉にする余裕がない場面もある。そんなときは、シンプルに「自分(あるいは相手)にとって、今何が大切だろう?」と自分に問いかけることが有効である。大切なこと=ニーズと捉えることで、心が落ち着き、共感につながる一歩になる。

また、NVCの対話スタイルが日本文化と相容れないと感じることもあるかもしれないが、そのような文化的な振る舞いの背景にもニーズが存在するという視点が役立つ。たとえば「恥をかかない」文化には、「調和」や「受容」といったニーズが隠れている可能性がある。

さらに、NVCは「問題解決」ではなく「自然な分かち合い」が起こるつながりを重視する。
分かち合いとは、自発的な与え合いから生まれる関係性であり、無理に結論を出そうとすることではない。

学びを深めたい人は、NVCのトレーナーによるワークショップへの参加を通じて、仲間との実践的な対話の中で自然な形でNVCを身につけていくことも推奨されている。

69

NVCを日常に活かすには、「今、何が大切か?」と自分や相手に問いながら、共感的につながり合う姿勢を持つことが出発点である。

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